酒場まぼろし。
サラリーマンが二人飲んでいる。
「うちの課の新人の話、知ってる?」
「うん、ちょっと変わってる子ね。」
「サンプル注文させると、いつも指定の色と違うサンプルが届くって課長が怒ってたんだ。
茶色を頼めっていってるのに赤だの緑だのが届くって。」
「人の話を聞いてないの?その子。」
「いや、そういうことが何度も続くので、へんだな、と思ってたら、
なんと本人も気づいていない色盲だったんだって。」
「色盲?」
「うん、赤や緑が茶色に見えるらしい。」
「そうなの?いつも緑のスーツに赤のネクタイとか合わせてて、
なんて奇抜なファッションだ、と思ってたらそうじゃなかったんだ!」
観点、という言葉を知っていますか?
簡単に言うと判断基準のことです。
人ってみんな考え方が違うから観点も十人十色なんですが、
なぜか自分の感じるように人も感じるはずだ、と思いがちです。
それは無意識では自分の観点が絶対だ、って思っているからなんです。
初めの話に戻ると
5感は特に人間共通と思ってしまうから
赤や緑が茶色に見えるはずない、と思いますよね。
でも色盲の方の目には赤も緑も茶色っぽく見えるらしいのです。
お互い自分の見え方しか知らないから
当然自分の見ているものが正しいと思いますよね。
でも色盲でなくても、赤い色を観た時に感じる印象は人によって違います。
青に近い赤を感じる人もいるし、
黄色に近い赤を感じる人もいるかもしれない。
さらに情熱のイメージで赤を観る人もいれば、
紅白幕の連想からなんだかめでたい、と赤を観る人もいます。
みんな観え方が違うのに
無意識ではみんな自分と同じ感覚だろうと思っているので
自分がどんなイメージで観ているのかわざわざ相手に伝えないですよね。
伝えずにコミュニケーションとるから
実は会話はズレていき、
話は成り立っているように見えても
双方の持っているイメージがまるで違っている、ということが起こります。
小さい笑えるズレならいいですが、
ズレのせいで争いになって人間関係が壊れてしまったり、
もっと大きい範囲では国と国の戦争になったりします。
観点が起こす問題を放っておくと結構こわいんです。
それは反対にこの問題さえクリアすれば
人間が引き起こす、山ほどある問題が次々解決されるということですが。
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