酒野さん夫妻はケンカが多い。
妻のツマ美さんは今日もぷりぷりしながらまぼろしに飲みに来た。
「聞いてよ。うちの人って信じられない無神経。
私が仕事で疲れて帰ってきてすごい疲れ顔してるのに何にもいたわってくれないの。」
「そうなの?」
「全部家事放棄したい気分だったのに頑張ってやったのよ。ため息つきながらもね。
それなのにそれは当たり前みたいな態度でさ。お疲れ様も、ありがとうもないのよ!」
「え、待って待って。だって疲れてるから家事休みたいって言ってないのに
旦那さんにはわからないじゃない?」
「でも普通わかるじゃない?疲れ顔してるんだから。辛そうにため息もついてるんだし。」
「いやいや、この前もいったけれど男性は察するのは無理だよ、一般的に。」
「えーッ。」
観点、という言葉を知っていますか?
簡単に言うと判断基準のことです。
人ってみんな考え方が違うから観点も十人十色なんですが、
なぜか自分の感じるように人も感じるはずだ、と思いがちです。
それは無意識では自分の観点が絶対だ、って思っているからなんです。
この話からするとツマ美さんは
自分が疲れ顔してため息ついていたら
旦那さんは相当疲れているのがわかるだろうから
彼女をいたわるべきと思っていて(無意識に)
だからお疲れ様もありがとうも言ってくれないのは、
無神経だ、と怒っちゃうんですね。
「ちょっと待って、確認してみる。」
ツマ美さんはいきなり夫に電話をかけはじめた。
数分後。
「どうだった?」
「うん、なんだかイライラしているらしいと感じたけど、
怖くて声かけられなかったんだって。。
疲れをアピールしてただけなのにイライラしていると思われてたんだ。。。」
「ほらね、こんなに思っている事ってズレてるんだよ。」
「ほんとね。ちゃんと言葉で疲れたから休みたいって言えばいいだけなのね。
でもさ、そんなことも察せられないってオトコってダメじゃない?」
「はいはい、それもあなたの観点だからね(笑)。今夜のお酒も怒りのヤケ酒にならずに
よかったね、乾杯!」
(つづく)
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