酒野さん夫妻はケンカが多い。
妻のツマ美さんは今日もぷりぷりしながらまぼろしに飲みに来た。
「聞いてよ。うちの人って信じられない無神経。
最近、トイレの小さいほうも座ってする男性が多いじゃない?
立ってするとあちこち飛び散って掃除が大変だから。」
「そうらしいね。」
「だからうちの人に言ったの。
立ってするとすごい飛び散って汚くなるから掃除が大変そうよ、って。
それなのにまだ立ってしてるの。私がトイレ掃除嫌いなのにこれは当てつけかしらって思っちゃう。」
「え、待って待って。だって旦那さんに座ってして、って頼んでないんでしょ?」
「はっきり頼んではないけど、、。でも普通わかるじゃない?
掃除するのは私だけなんだから、掃除が大変だ、って言ったら
立ってしたら迷惑なんだな、って思うのが普通じゃない?
じゃあ座ってやろう、というのが思いやりじゃない?」
「いやいや、男性ってはっきり言わないと分からないよ。
きっと旦那さんも気づいてないよ。」
「えーッ。」
観点、という言葉を知っていますか?
簡単に言うと判断基準のことです。
人ってみんな考え方が違うから観点も十人十色なんですが、
なぜか自分の感じるように人も感じるはずだ、と思いがちです。
それは無意識では自分の観点が絶対だ、って思っているからなんです。
この話からするとツマ美さんは
立ってトイレされると掃除が大変になる、と伝えれば
旦那さんが座ってしたほうがいいんだなと察してくれるのが当然だ、
という観点がある。
普通みんなそう考えるだろう、と無意識に思っているので、
そうしない旦那さんに対して怒っちゃうわけです。
「ちょっと待って、確認してみる。」
ツマ美さんはいきなり夫に電話をかけはじめた。
数分後。
「どうだった?」
「うん、やっぱり自分に座ってほしいとお願いしてるって思ってなかったみたい。
立ってすると汚れるんだ、という話をされたから
汚さないように立ってしよう、と思ってたみたい。」
「なんだ、気を遣ってくれていい旦那さんじゃない。
それで座ってね、っていえたの?」
「あ、言うの忘れちゃった!」
「ま、いいんじゃない?今夜のお酒が怒りのヤケ酒にならずによかったね、乾杯!」
(つづく)
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