酒野夫妻はケンカが多い。
といっても一方的に妻のツマ美さんがぷりぷり怒っていることが多いのだが。
酒場まぼろし。ツマ美さんと友人。
「うちの人がね、もう寒くなったから扇風機しまおうと思ったらしくて、
羽を洗って掃除してしまってくれたのはありがたかったんだけど
詰めが甘いのよ。」
「何が?」
「羽を洗面所で洗ったから、洗面所の排水口が扇風機のホコリごみで詰まっちゃってたの。気づかないのかわざと残しているのか、そこまでは掃除してくれないのよね。」
「男の人気づかなそう。目標は扇風機なわけだからその事しか頭にないんじゃない?」
「主婦からしたらありえないけど。それじゃあ50点よ。」
「厳しいわねえ。でも旦那さん、全然家事をしてくれないって前に聞いたけれどやってくれるようになったのね。」
「んー、まあね。でもさ、自分の部屋の扇風機しかやってないよ。リビングにあるのはしらんぷり。」
「もう。その変化を喜ばなきゃ!まったくやらないマイナス地点から、言えばやるゼロ地点、言わずともやってくれるプラス地点に大変化じゃない!!」
「そうねえ。そうか。そんな風に考えたことなかったわ。」
ツマ美さんの考え方「扇風機も、羽についていたゴミで詰まった排水口も掃除するのが当たり前」の視点からみたら、排水口の掃除を残している時点で50点なんですが、
これはツマ美さんの考えであって、万人のものではありません。
旦那様の視点では扇風機の羽を洗った時点で目的達成で100点満点だったかもしれません。
こんな風に考え方(判断基準)はみんなバラバラなんです。
でも無意識に自分のが絶対正しいと思っているのでその視点から他人を見てジャッジしてしまいます。
批判までしなかったとしても「私の考えとは違う」と境界線をひいています。
みんなバラバラなので一致するわけがないのですから、私と違うのは当たり前です。
違うからわかりあえないね、でもなく
違うけど私に合わせてほしい、でもなく
違うけど私が合わせるわ、でもなく
違うんだね、何で違うんだろう?と相手を知ろうとする一歩を踏んでみると
違うことが面白さに変わってきます。
「違いが面白い、か。
その境地、なかなか味わえないけど違うことだらけよ、うちの夫婦。」
「じゃあ、まだまだこれから違いを面白がれる伸びしろが無限大だわね~!!
かんぱ~い!!」
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